

札幌の味噌、旭川の醤油、函館の塩が北海道の三大ラーメン。現在、函館には約150店のラーメン店があります。なかでも澄んだスープとストレート細麺のラーメンは、函館市民が大好きな味。スッキリした透明なスープに深い旨味が隠されています。地元民が絶賛する厳選10店の塩ラーメンをぜひご賞味ください。

ラーメンは中国の麺をベースに、日本で独自に発展した食べ物である。元来日本人は、外国から這って来たものを日本風にアレンジするのを得意としてきた。「天ぷら」は西洋料理のフリッターを基に、長い年月をかけ「天ぷら」に昇華。
ライスにカレーをかける「カレーライス」も、日本独自のもの。インドではカレーにナンをつけて食べる。トマトケチャップ味の「ナポリタン」というスパゲティーはイタリアには存在しない。料理に限らず、「カステラ」もポルトガルのパンのようなものが改良され、「カステラ」として長崎で生まれた。
「ラーメン」は、もはや中国の影響はまるでなく、日本独自の料理として愛されている。特に近年は「ラーメン」に愛情を注ぐ料理人が数多く、素材や調理法にこだわりより旨い「ラーメン」を追求している。そのおいしい「ラーメン」発祥の地は、北海道とも言われ、戦後の東宝の映画「社長漫遊記」などにも、「札幌ラーメン」が紹介されている。
札幌ラーメン
北海道ラーメンを大別すると、札幌の味噌ラーメン。旭川の醤油ラーメン。函館の塩ラーメンがあげられる。 僕は20代の頃。ラーメン横丁の「ドラム缶」という店でラーメンを食べた。そのとき麺の上にモヤシやトウモロコシが載っていたのを思いだす。 でも、いまや札幌ではトウモロコシが載るラーメンは観光客向けの、あまりおいしくないラーメンだそうである。 札幌は味噌ラーメン発祥の地で、「味の三平」創業者、大宮守人氏が、’61年に「味噌味めん」として品書きに掲げたのが最初である。 いまの札幌では味噌以外にも多様な味が登場。醤油、塩味をはじめ、麺も細麺、太麺、ちじれ麺、ストレートとバリーエーション豊かである。ダシも清湯、濃厚豚骨、鶏白湯、煮干し系、海老系、魚介系などさまざまなタイプがあり、もはやこれが「札幌ラーメン」とは、限定できない。 現在の札幌は「純すみれ」系が、主流である。「純すみれ系」の具体的な店名は「彩末」「八乃木」「狼スープ」「千寿」「雪月花」「花丸」はちまき屋」「「おざわ」「庵」「桜倉」「空」「林」などがある。いまや「純すみれ」系は、札幌だけでなく、千歳市、小樽市、北見市をはじめ、千葉県、東京都、神奈川県、京都府、福岡県と全国主要都市に展開している。
旭川ラーメン
旭川ラーメンと言えば、基本的にはダシに豚骨と魚介類を使ったやや濃いめの醤油味である。 この味が完成したのは、「蜂屋」や「青葉」で、昭和’20年頃である。 僕は、今から40年ほど前に雪景色の撮影で旭川に出かけた。仕事を終えて飛び込んだラーメン屋さんが、偶然にも「青葉」だった。 「こんなに旨いラーメンがあるのか」と、感動したことをいまでも憶えている。そのころラーメンブームはなく、情報誌もない時代だったが、あまりの旨さに「青葉」の名前は忘れなかった。 現在は、醤油味だけでなく塩味を押す店もある。88年創業の「山頭火」の塩ラーメンが成功して「山頭火」系と呼ばれる勢力が東京にも進出している。10年ほど前、首都圏でブームとなった豚骨魚介醤油味は、旭川ラーメンの味に似ているが、スープの作り方が異なる。 首都圏のラーメン店は、強火でガンガン焚いた濃厚スープに魚粉をぶち込んだ作り方をしている。旭川では、やや濃いめの豚骨スープに、自然に魚ダシを溶け込ませているので、味がまろやかである。
函館ラーメン
僕は「塩ラーメン」と言えば、函館を思いだす。いまから35年ほど。建築紙の編集長をしていた頃、函館を訪ねた。 屋根素材を扱っている工務店の社長を取材。仕事を終えた後、寿司とお酒をごちそうになった。 夏の函館は海風が気持いい。ほろ酔い加減で帰る途中。社長に塩ラーメンを誘われた。「社長もうムリです。これ以上食べられません」と、お断りしたのだが・・・。社長は「函館に来たら、塩ラーメンを食べていただかないと」と、強引に薦められて「タイガーラーメン」という店に入った。 このとき僕は初めて塩ラーメンに遭遇。いままでと違うまろやか味に驚いた。スープが黄金色をして透き通っている。ひとくちすすると、やわらかな塩味に鶏のコクやほのかに海老のダシを感じた。社長の本物の塩ラーメンを食べてもらいたいと言う気持が、ひしひしと伝わった。 僕は寿司、酒の摘みを数種類食べているのに、塩ラーメンを完食した。その後社長とは仕事を離れて、仲が良い友人となったのだが、社長は仕事中事故に合い帰らぬ人となった。また、塩ラーメンに情熱をそそいだ「タイガーラーメン」店主の訃報も聞いた。函館に訪れるたびに、ステキな二人の友人と、塩ラーメンの味を思いだす。
現在の函館ラーメンは老舗の中華料理店とラーメン専門店に二極化している。 老舗の中華料理店はラーメンだけでなく、中華メニューを揃えている。だがラーメンメニューの筆頭には、塩ラーメンを掲げている。ラーメン専門店は、中華メニューは、チャーハン、餃子くらい。ラーメンは、塩味だけでなく醤油味、味噌味もある この傾向は札幌と似ている。さらに函館では、昭和30年代頃から、日本蕎麦店でもラーメンがメニューに載るようになった。「長寿庵」「江戸八」「えびす庵」「さんてい」など、老舗の蕎麦店では、ほとんどがラーメンを提供している。そしてたいていの店は、塩ラーメンをメインだ。 やはり函館は塩ラーメンの町と言える。